September 15, 2015
[INTERVIEW] 田辺玄 – ”Studio Camel Houseから”

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田辺 玄 | tanabe gen

WATER WATER CAMELのひとり。山梨に暮らす。
2006年、自主レーベル”Gondwana label”を立ち上げる。全国各地を飛び回りながら、カフェやギャラリー、お寺や廃校、植物園やプラネタリウムなど、多様なスペースで音を響かせている。またギタリストやレコーディングエンジニアとしての活動や、CM、WEB、展示空間のサウンドデザイン等、音を媒体にさまざまな人や場とのコラボレーションを展開している。



8月下旬、少し寒くなり秋がすぐ側まで来ていることを感じる日、山梨の地で田辺玄氏にお会いした。
そして今年4月に完成させたスタジオ兼自宅”Studio Camel House”を拝見させて頂いた。


そこは山梨駅からそう遠くない山沿いに建つ。
一階はリビングダイニングや寝室などの生活スペース。
こだわり抜かれたモノが整然と並び、大きく切り抜かれた窓から山梨の風景が絵画のように目に飛び込んでくる。
耳を澄ますと、雨の音や虫の声、遠くに見える学校の構内放送などが心地よく耳に届く。
家の中に居ながら季節感やかすかな時間の流れまでもが、目や耳で確かに感じ取られるような空間。


地下に降りるとレコーディング室や制作室のあるスタジオとなっている。
一歩足を踏み入れた瞬間、ピタリと時が止まり、自分の中に入り込んだ気がした。
周囲の音が消え、自分の喋り声や息づかいがいつもとちがう距離感で聞こえる。
しかしその止まった時の中にも、木々の緑や蒼い空がスピーカー奥の窓に広がり、密閉感は全く感じない。
むしろ窓の外から柔らかく差し込む光さえもが、躍動的に音を放っているように感じられる静寂があるような気がした。

“Studio Camel House”

そこは音楽スタジオであり、通常の音楽スタジオには無い空気が溢れている場所。
訪れた誰もが、まさに“house”と感じられるような空間。

そんなStudio Camel Houseについて、田辺氏に話を伺ってみた。


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いつかまた

ー Studio Camel Houseをつくるきっかけを教えて下さい。

もともと東京にいた時キャメル(WATER WATER CAMELの略称)で一軒家に住んでいて、色んな人が来たり泊まったり、音楽つくったり録音したりしてて、(その共同生活を終了させてそれぞれに拠点を構えたけれど)その時の思い出が色濃くあって、いつかまたそういう場所を地元の山梨でつくりたいという想いは自分の中で凄くあった。
またゆっくりと色んな人が泊まって音楽に集中できる場所をつくれたらいいなとずっと思っていて、それがやっと形になったって感じかな。
だからここの名前はみんなで住んでいたキャメルハウスという名前を引き継いで”Studio Camel House”とした。

ー 今まで一緒に作品をつくってきたアーティストの方がまたここで作品づくりをしたりゆっくりしたりできますね。

そうだね、今まで一緒にしてきた仲間もそうだし、これから出会う人も、ゆっくり過ごしたり作品をつくったり、そういう場所になればいいなと思う。自分の作品もそうだしね。
きっと場所に憧れていたんだと思う。時間とか積み重ねている人やいろんな生活をしている沢山素敵な人たちに会えているからやっぱりそういう刺激もすごいあったんだなと。
どっちかというとみんなが大事にしている場所に行くほうが多くて、行って色々とお世話になって、その人の生活を垣間見て帰ってくるということが多かったから、いつか自分が時間を積み重ねていける場所が欲しかったんだと思う。
また自分が引き続き行ったりすることはあると思うけど、だれかが自分のところに来てくれて何か一緒にするということをやっていきたいなと思う。

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刷り込まれているもの、染み込んでいるもの

ー 地元の山梨で暮らしたいという想いはあったんですか?

中学、高校ぐらいの時は、地元をとりあえず出たい、そう思う人は結構多いと思うけど、僕もそうだった。
東京に10年くらい住んでいたけど、東京じゃなくても別にいいなという気持ちになったし、その時からライブで色んな地に行くようになって、色んな人の生活を見て、どこにいても別にいいんだなという感じはした。
刷り込まれているもの、染み込んでいるものはあるなと思う。空気とか風景とか食べものとかもそうだけど、自分が生活していて居心地がよくて自然にいられるのは山梨だったかな。すごい山梨が好きで生活したいという思いがあったかと言われるとそうでもないけど、自然な状態を求めているとここへ戻って来ちゃった感じかな。

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ー 田辺氏がつくられている作品はここ山梨にとても合っている気がしますがいかがですか?

そうだね、生活をしている場所ってのは良くも悪くも作品には反映されると思うから。
場所が作品をつくっているのかもれないし、ひょっとしたら作品が場所をつくっているのかもしれないし、どっちが始まりかわからないけど、確実に自分がしたいこととか、鳴らしたい音とかはこの場所には反映させている。”好き”っていう感覚が色んなところに散りばめられていると思うし、そこに共感してくれる人がここに来て何かやりたいと思ってくれているのかもしれないね。
みんなどこが始まりかわからないけどリンクしているよね。何かそういうのが大いに出ているほうがいいと思うんだよね。みんな何でも受け入れられるとか、色んなものに対応しているというのではなく、これはここ、というふうにはっきりしつつも風通しがいいというのが自分の中で理想かな。頑なになり過ぎちゃうのは良くないと思うし、こだわることと頑なになることはまた別だなと思うから、こだわりつつも風通しがよいというのがここの目標かな。

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溢れてくる音

ここへ訪れたアーティストがほろりと作品をつくって帰っていく。
泊まりにきたゲストが必ず書くという宿帳はここを訪れた一人一人に心に残る瞬間が生まれていることがわかる。田辺氏がなにを大切に想い制作しているのか暮らしているのかがわかるような気がした。

「自然に出てきてそれが作品になるのはいいなと思う、
こういう素の感じとか溢れてくる感じとか」と田辺氏はいう。

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ー 録音できるようにどの部屋にも音楽用のコンセントプレートが取り付けられていますが最初からのこだわりですか?

最初からこの録音がどこでもできるようにするというのはイメージにあった。生活の中で録りたい場面があるかもしれないから。例えば、リビングのソファに座ってリラックスしながら、外の音とか入って録りたいことがあるかもしれない。
東京のキャメルハウスのときは防音になってなくて、普通にリビングに機材を置いて、「これから録るから静かにしてね」とか言いながら録ってて、冷蔵庫の音がうるさいからコンセント抜いたりして。めんどくさいけど、それはそれでよかったんだよね。あの感じが頭にあって、家兼スタジオでもあるけど、全部スタジオでもあるようにしようと思ってた。

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富士山が眺められるベランダ。
今回は惜しくも雲に隠れて見えなかったが、そこには山と電車と暮らしを積み重ねる人々の風景があった。

studio came houseはそんな風景のそばで、
これからたくさん
私たちの日常に寄り添う素敵な音楽を生み出していくことだろう。

Water Water Camel

田辺玄 official site

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